2014年2月28日金曜日

2013年度卒業式 式辞

卒業生の皆さん、本日はおめでとうございます。保護者の皆様、高いところからではありますが、お嬢様のご卒業、誠におめでとうございます。本日のお喜びの日を、ここでこのように共にできることを、心より幸せに思っております。パウロ大塚司教様、シスターモーリン和田理事長様を始めとするご来賓の皆様、本日をこのように共にしていただくことは、私たちの大きな喜びでございます。誠にありがとうございます。

 卒業生の皆さん、このように私がこの壇上から皆さんに向かってお話しすることも、もう、これが最後になります。クラスメートと肩を並べてこのように立ち、同じ空気を吸いながら、この場に共に存在する、この日この時はもう二度と巡り来ない。私たちの生きる命は、その一回性に満ちたものです。普段はそのことに思いを馳せることがなかなかできない私たちですが、でも皆さんは、今日の時が近づくにつれ、そのことを意識し始めました。このホームルームで、この廊下で、この場所で、この友たちと当たり前のようにして時を過ごし、他愛のないことで笑い合える時間がもう、確実に終わりに近づいている、そう思うにつれて、その時間が愛おしく、その友を愛おしく、自分自身を愛おしく感じる気持ちが募ったことでしょう。一回限りで過ぎ去るすべての一瞬、その有限の時間と空間の中にあって、あなた方は、このノートルダムの学び舎で、神様があなた方一人ひとりに下さったかけがえのない真理に気づきました。その真理とは、この世のものがすべて過ぎ去っていく中で、決して過ぎ去らない、終わらない、朽ち果てないものがあるという気づきです。皆さんが今日、未来への扉を開かれる前に、最後に、そのことを振り返りましょう。いったいノートルダムは皆さんに何を伝えてきたのか。
 ノートルダム女学院はあなたに、この世界であなたは決して一人ではなく、多くの人々の愛の中でつながり合って生きているのだということを、あらゆる機会を通して知らせてきました。あなたをこよなく愛し、喜びとご苦労の中で大切にお育てになった保護者の方々、何気ない日常の中で、楽しかったことや辛かったことを共にしたかけがえのない友人たち、そして、どんな時もあなたを励まし勇気づけることを忘れなかった先生方職員の方々、それらの出会いの中で、ノートルダムは、あなたに伝えました。これらの温かく優しい眼ざし、あなたのつぶやきを聴こうとする耳、あなたが大事なのだと叫ぶ声、一緒に走ろうとつなぐ手、一緒に休むために下ろす腰、まるごとあなたを抱きしめる腕、あなたが弱い時に背負って歩む脚、それらはすべて、愛そのものである神からのものであったことを。神が私たちを先に愛され、神が私たちに生きてほしいと願いながら、命と愛、知恵と勇気を与え、素晴らしい出会いの数々を育まれ、私たちは一人残らず、その神のもとで、愛する人へと成長していくように招かれたのだということ、そのことを、知ってほしいと願い、伝え続けてきました。
 さらにノートルダムは、あなたに、世界を見るビジョンを持ち、ものごとを選択する基準を育て、その時その場で最もよいものを自分で選び取って前に進むこと、それができることが真の自由なのだということを教えました。そしてその自由を、自分の利益のためではなく、神と他者の幸いのために使うこと以外に、真の幸福はあり得ないということも、あなたに告げ知らせました。日々の学びは、真の幸福を得ることをゴールとする旅路、神から与えられた一人一人異なる賜物を見出す旅路であり、見つけた賜物をフル活用しながら、この地上で与えられた命をどうぞ精一杯生きてほしいという願いを、私はあなたに抱き続けました。
 私の大好きな文章を、今日皆さんに分かち合います。フランス人のイエズス会司祭で、古生物学者でもあったテイヤール・ド・シャルダンの考え方を、わかりやすく表している文章として、私は今日、あなた方と共有することが大変ふさわしいと感じました。神と宇宙と人類についての彼の考え方に、私は大学時代に出会い、深く感動しました。神学と科学との和解を可能にした人の中で、最も影響力のあった者とも言われました。

「私たちは全人類の初めから、世の終わりまで生きとし生けるものが関わる一つの織物を裏側から織っているようなものだ。裏から織っているので、自分に与えられた個所がどんな模様かははっきりとはわからない。けれども、全人類の終わりが来た時に、全人類が関わった一つの織物は、私たちに表を現わして掲げられる。そのときには、自分の織った個所が明らかにわかる。全人類が織り成す織物が見事な芸術品になるかどうかは、あなたにかかっている。あなたが‘自分なんて’と言いながら自分の受け持った個所をいいかげんに織ると、織物の質が変わっていく。あなたが自分の織物を裏側からみているとき、自分の使命が何だかわからないかもしれない。しかし、今ここで自分を大切にしながら与えられた能力を生かして、他の人とのよい関わりに焦点を合わせ、調和と一致をめざして働く時、それは見事な質の織物となる」


 最後に、私は皆さんに願いたいと思います。あなたは神の愛の中で生まれ、あなたの青春の日々は神の愛の中に豊かにありました。これからは、あなたは、愛する人としてどうか、あなたの賜物を生かしながら、出会うすべての人々にとって、光であり、希望となってください。この世界には、孤独な人、苦しんでいる人、弱い立場に押しやられて泣いている人々がたくさんいます。あなたのすぐ近くにも、そして遠く海の向こうにも、彼らは、あなたが来るのを待っています。まなざしをしっかり神に向けて進む時、神はそれらの人々の存在を、あなたに知らせてくださることでしょう。どうか、それらの人々の隣人となり、彼らを愛し抜き、彼らにとって光となり、希望となってください。ノートルダムで教育を受けたあなたには、それがおできになると私は信頼を持っています。
さあ、私が話すべきことはすべて話しました。これが最後です。でもこれは始まりです。聖母マリアの色のガウンを身にまとい、新しい扉を開けて、未知の世界にそれぞれ飛び立ってください。今からしばらくは、後ろを振り返らないで、前進あるのみです。では、行ってらっしゃい。
 神様の祝福が皆さんの上に豊かにありますように心からお祈りいたします。