皆さんは、京都の衣笠にある国際平和ミュージアムを訪れたことがおありでしょうか?立命館大学が「平和創造の主体者をはぐくむ」という素晴らしい理念のもとに開設された平和博物館。私たち女学院には「平和を考える日」が設けられていて、中学校在学中に必ずその博物館に一度は訪れることになっています。今日は、この博物館のロビーラウンジの話をしたいと思います。私も、中学生と共に何度となくこの博物館には足を運んでいますが、たいてい展示室の方でかなりの時間をかけるので、ラウンジに座る時間があまりとれませんでした。が、今年は、そこに、先生方と共に少し座る時間がありました。
ゆったりとした天井の広い空間の、東と西の広い壁のそれぞれに、大きなレリーフが掲げられています。それが手塚治虫さんの「火の鳥」であることは、その特徴からすぐにわかりました。よく見ると、東と西の二体の「火の鳥」は、それぞれ様子が少し異なっています。
東壁面の「火の鳥」は、首から羽のあたりに暗い色彩が施されており、頭も少し下がっていて、どことなく悲しげです。
一方、西側の「火の鳥」は、明るい金色で全体が輝いていて、首を高らかに上げて翼を大きく広げています。これはどういう意味があるのだろうと知りたくなって、入口近くにある説明文を見つけたのでした。
東の鳥は戦禍による人類の未曾有の苦しみと悲しみの「過去」を語り、西の鳥は平和への希求と実現を呼びかけている「未来」である、と。手塚氏の「火の鳥」は、随分前に映画で観た記憶があります。様々な生き物たちが大自然の摂理の中で懸命に生き、その命を謳歌するストーリー、命の尊さを宇宙規模で捉えたその作品は、なるほど、この博物館の理念に叶うものであると思いました。そして、このラウンジに名前がついていて、「火の鳥:過去、現在、未来」―ああ、そうか、私たちが今いるこの空間は、「現在」なのだ。平和創造の主体者たる私たちが、過去を振り返り、未来に向かって生きようとする「今」「ここ」で、何を選択し、どう決意し、どこに向かって生きていくのか―私が現在を生きることに深い意味を与えてくれる、すばらしい空間づくりであると感動しました。
私たちは、それぞれ一人ひとりが平和を創りだすように招かれている、その当事者なのですね。「平和を創りだす」など、あまりにも壮大で、自分には関係がないと思わないでください。目の前の困っているだれかに手を差し伸べること、悲しむ人の傍らに共にいること、それこそが、あなたによって創りだされる「平和」です。ノートルダム女学院では、毎日の帰りのホームルームで中一から高三まで、あることを創立当初から行っています。それはこの火の鳥のレリーフに深く関係があるなあと思いました。「平和を求める祈り」―それは、「私を平和の道具としてお使いください」という美しくみごとな一文から始まる祈りです。「火の鳥」に触発されて、次回はこの「平和の祈り」について、分かち合いたいと思います。
神様の平和が皆様と共にあるように、今日も祈っています。